なぜスマートリングにこれほど多く機能を搭載できるのか
はじめに:指輪型ウェアラブルは「最も難しい形状」
スマートリングは、見た目こそシンプルですが、ウェアラブルデバイスの中でも最難関の製品と言われています。
その理由は主に次の3点に集約されます。
-
実装面積が小さい
-
実装面が曲面である
-
複数サイズが必要
スマートウォッチであれば、平面基板・比較的大きなバッテリー・共通筐体設計が可能ですが、指輪ではそれらが一切通用しません。それでも現在のスマートリングは、心拍数、活動量、体温、睡眠など、多くの生体情報を高精度に取得しています。
その背景には、単なる部品の小型化を超えた「総合技術力」が存在します。
課題①:サイズが小さい
指輪内部に使える体積は数百立方ミリメートル程度しかありません。その中に、
-
MCU(制御用プロセッサ)
-
PPGセンサー(心拍・血流)
-
IMU(加速度・動作)
-
バッテリー
-
無線通信回路
-
防水・封止構造
をすべて収める必要があります。
この制約を突破するため、MedVigilanceでは、徹底した部品選定と高密度実装設計を行っています。
解決策①:Nordic製超小型MCUと微型センサーの採用
スマートリングの中核となるのが、Nordic Semiconductorの超低消費電力・超小型MCUです。このMCUは、
-
極小パッケージ
-
常時動作に耐える低消費電力
-
BLE通信とセンサー制御の統合
を高次元で両立しており、指輪サイズでも安定したデータ処理を可能にしています。
さらに、PPGセンサーやIMUも「リング専用レベル」で小型化された部品を採用。センサー単体の性能だけでなく、MCUとの協調制御による省電力化が、実用的な連続測定を支えています。
課題②:実装面がすべて曲面である
指輪内部では、基板も電池も円環状に曲げる必要があります。
平面基板が前提の一般的な電子設計とは異なり、
-
曲げ応力による断線リスク
-
部品配置の自由度低下
-
センサー位置の個体差
といった問題が発生します。
解決策②:サイズ別・曲面リチウム電池という選択
MedVigilanceでは、指輪サイズごとに最適化された曲面リチウムイオン電池を採用しています。
これは単に「小さい電池」を入れるのではなく、
-
内径・外径に沿った曲率設計
-
サイズごとの容量最適化
-
長期使用を前提とした安全設計
を行った、スマートリング専用電池です。
このアプローチにより、サイズ違いによる性能差を最小限に抑えつつ、安定したバッテリー寿命を実現しています。
課題③:サイズが違っても精度と防水は同一でなければならない
指輪はサイズが変わると、
-
センサーと皮膚の距離
-
光の入射角
-
内部空間の密閉性
がすべて変化します。特にPPGセンサーは「光学特性」が精度を大きく左右します。
解決策③:10年のウェアラブル製造経験による高透光IP68構造
MedVigilance株式会社は、10年以上にわたるスマートウォッチ・ウェアラブル量産の経験を活かし、FyRingの設計と製造に特に以下の点を意識しながら、製品化しました:
-
高透光かつ生体適合性のある樹脂設計
-
光の散乱を抑える内部構造
-
長期使用に耐えるIP68相当の防水・防塵封止
「透光性」と「完全密閉」は本来トレードオフの関係にありますが、材料選定・加工精度・封止プロセスを総合的に最適化することで、この矛盾を克服しています。
スマートリングは“小さな製品”ではない
スマートリングは、単なる小型ガジェットではありません。
-
半導体設計力
-
専用電池を設計できる調達力
-
曲面実装・光学・防水を統合する製造技術
-
長年にわたる量産と品質管理の経験
これらすべてが揃って、初めて成立する製品です。
指輪サイズに多くのセンサーを搭載できる理由とは、
サイズの小ささではなく、その背後にある技術要素とサプライチェーンの総合力に他なりません。
スマートリングは、まさに“技術の集合体”としてこれからも
